忘れられない1日3

経験した事のない、なんとも言えない時間でした。


もしかしたら、もう会えないかも。

そんな言葉を振り払いながら、ズーッと壁の時計を見てました。


一言もしゃべらずただジッと時計を見てました。カミさんも同じだった気がします。


30分か40分か。


隣のすすり泣いている声を聞きながら時計をぼんやりと見てました。


名前を呼ばれました。


ついにきた。と。

立ち上がってドアを開け先生の顔を見ました。


ありました。


ゾッとしました。凸の字に折れ曲がった巨大な串がそこにはありました。こんな物どうやって飲み込んだんだよ。と思うくらい巨大に見えました。


ちょうど胃に落ちる直前の食道に引っかかっていたそうです。胃に入っていたら大変でした。と。


彼は麻酔が抜けるのにしばらく安静にしてます。大丈夫です。と。


この時初めて助かったと実感しました。

なんとも言えない安心感と脱力感。


安心したら感謝の言葉が自然と出ちゃいました。まるでドラマかと。大袈裟でなく圧倒的で偉大な存在に感じ、このような感情になる自分にさらに驚きました。


ヒーロー現る


奥の部屋のケージで静かに横たわる彼を見せてくれました。